2018年度付中通信第4号 自覚的

2018.5.31  高水高等学校付属中学校長 宮本 剛

近い将来、つまり20年後くらいには、次の2つのことが世界中で起きているだろうと、今、しきりに叫ばれ続けています。                                                                                                                         1、グローバル化の中で多国籍企業が国境や人種・宗教を超えて経済合理性の元で世界中を移動し、拡大していき、共通語は「英語」になっている。                                                                                               2、工業・科学・医学、特にコンピュータサイエンスの爆発的な発達により、人工知能(AI)が人間の仕事 を奪い、今の仕事の約半分がコンピュータにとって代わる。                                                                                                  というようなことで、2030年頃までには今はまだ存在しない職業が数多く生まれ、今の子どもたちが大人になる頃にはその過半数が新たな職業に就くと言われています。                                                                               たった10年前にスマホをどれだけの人々が携帯していか。逆に今、スマホを持たない高校生の割合はどのくらいか。スマホの例ひとつとっても、近年のインターネットとコンピュータサイエンスの進化が爆発的だというのは、一目瞭然です。                                                                                                                    先がわからないというのは何とも心細いものですが、本日「たかちゅう」の生徒たちが決めた月間・週間目標を聞いて、わたしはちょっと明るい気分になりました。どうですか。敬語の使い方について、問題意識をもって、そのスキルアップを目指そうとする中学生たち。しかもそれを月間目標に掲げて、生徒全員で取り組もうと働きかける生徒会。                                 もうひとつ。                                              どうやら、道徳か何かの時間に、スマホについて話し合ったみたいで、班ごとに、その成果をまとめたものが廊下の掲示板に貼り付けてありました。                                       そこで私は思わず、「自覚的」という言葉が頭に浮かんできました。自分と仲間とその現状を認識し、今後どうあるべきかを考え、実行に移すこと。これこそ、協働的なプロセスであり、主体的な取り組みですね。私はそれを未来に対する自覚的な行為と考えています。心細さが飛んで行ったのです。

2018年度付中通信第3号 鄭さん

2018.5.15  高水高等学校付属中学校長 宮本 剛

5月9日から1泊2日で韓国の鄭さんに会ってきました。鄭さんは鄭忠錫と言って、昭和19年の旧制高水中学校時代の卒業生です。ということは、校長にとっても「たかちゅう」の皆さんにとっても大先輩というわけですね。                                            明治31年に設立された高水村塾は、2ないし3年制で大正9年まで続き、その後明治の学制改革の下で5年制の中学になります。その機に校舎を建て替えて、今あの楽学の碑の残る旧高水村の亀山の高台に移りました。そして大正14年に初めて本格的な旧制中学校の卒業生31名を送り出します。それから昭和26年まで、戦後の学制改革が施行されるまで、本校の旧制中学校は続きました。                                                                                                     韓国の鄭さんたちは、その旧制中学校時代に韓国から留学してきた生徒でした。戦前の昭和4年ごろから終戦を迎える20年まで、およそ16年間にわたって総勢375名の留学生が高水中学校で学んでいます。当時韓国は日本に併合され、日本語教育が進められていましたが、いわゆる尋常小学校6年間の義務教育の後の進学先はほとんどなかったのです。それで、李氏朝鮮時代の両班(ヤンバン)つまり士大夫階級の知識人の子弟たちで、比較的裕福かつ成績優秀な生徒たちが、進学先として日本に、そして高水に入学してきたわけです。当時、旧制中学校は山口県内に公立7校、私立2校の合せても9校しかありませんでした。

戦後71年経って、鄭さんもすでに93歳と高齢です。当時の高水の姿を語れる人は、韓国の鄭さんを含めて、もうほんのわずかな人たちです。私は今回鄭さんから多くのお話をうかがうことができました。「たかちゅう」とはどんな学校であったのか。鄭さんは教えてくれました。

「朝鮮戦争のあと、私たち卒業生の三分の一は教育界に身を捧げました。なぜだか分かりますか? 高水に入れば、そこは日本人もない韓国人もない、みんな平等に差別なく勉強させてもらえたからです。そんな教育が忘れられなかった。だから理事長さんを始め、私たちを育ててくれた先生方への感謝の気持ちを忘れたことは一度もありません。」

2018年度付中通信第2号 たかちゅう

2018.4.28  高水高等学校付属中学校長 宮本 剛

4月19日に新入生とスプリングセミナーに行ってきました。今年から田植えや稲刈りなど、米作りの恒例行事ができなくなり、高水訪問をこのセミナーと一緒に行うことになりました。旧高水村時代の同窓生の先輩方に指導を仰ぎながら続けてきた米作りは、まさに伝統行事でしたが、残念ながら昨年で終了となりました。

 

そして、亀山の旧校舎跡地で楽学碑を前に、旧制高水中学校時代の思い出を語ってくださっていた坂田先輩(92才)も足を運んでいただくことが難しくなりました。そこで、校長の私が、坂田先輩の言葉を思い出し、記憶があいまいなところは少し勉強して、新入生にかつての学校のことや生徒の様子などお話ししました。                                              話しながら私は、2つのことに特に念を入れました。
まず、亀山の地で高水は5年制の旧制中学校として山口県下にその名を轟かせ、自由闊達、生徒に公正公平な教師によって温かく育てられていたこと、そしてその伝統が戦後の6年制教育に引き継がれたこと。2つ目は、かつて高水中学校は「たかちゅう」と呼びならわされ、地域の人たちに愛されていたこと。
こんなことがあって私は、「たかちゅう」をリバイバルしたいという思いが強くなってきたのです。付属中はあっちこっちにあるけれど、「たかちゅう」は世界にひとつだから。

2018年度付中通信第1号 明るく広く温かく

2018.4.10  高水高等学校付属中学校長 宮本 剛

4月8日に付属中の入学式を行いました。新入生の皆さん入学おめでとうございます。
私たちは心から皆さんを歓迎し、この高水学園での出会いを大切に、これから6年間、楽しく有意義な学校生活を送ってもらいたいと思います。
さて、10日に本校は学園創立120年を迎え、恒例の開校記念講演を今年は岩国市副市長の白木勲先生にお願いしました。白木副市長はに本校の卒業生で、今日まで44年の長きにわたり、岩国市行政の重鎮としてご尽力されてきました。
講演では、岩国市の将来構想をわかりやすく説明していただきました。また、21世紀、特に高度情報化、グローバル化社会において、「考える力」を養成することを最重要課題に挙げられていました。最後に副市長ご自身の座右の銘ともいうべき、「明るく広く温かく」の大切さを説かれました。

「まず明るい心で自分から元気なあいさつをすることで、相手に明るいメッセージを伝えることができる。広い心で、相手の立場に立って物事を考える、相手に思いやりの心で接することで、共感し合え、協調することができる。温かい心で感謝の気持ちを伝える」
人として生きていく上で心がけたいものです。
校長の、こんな生徒になってほしい!こんな学校にしたい!

(1)行動力のある生徒              (2)生徒会活動の活発な学校
①何事にも自主的に率先して取り組む      ①生徒のアイデアと協働が学校を変える
②人の嫌がることも引き受ける         ②ボランティア活動で地域とつながり、世界を広げる
③言われたこと以上の成果を出す        ③プロセスを大切にすれば、楽しい学校になる